■ 地元不動産会社が破産へ──背景と経緯
2025年6月、新潟市秋葉区に本社を置く「株式会社シルト企画」が新潟地方裁判所より破産開始決定を受けました。
同社は戸建てやマンション、ビル、空き家などの不動産売買・仲介を手がけ、地域に根ざした営業を行ってきました。
2017年には年商1億円を超える時期もありましたが、近年は市況の冷え込み、売上の減少、資金繰りの悪化などが重なり、経営を維持できなくなったと見られます。
「地域で信頼されてきた老舗企業でも、時代の波に飲み込まれてしまう」
──これは他人事ではなく、多くの地方企業に共通する現実です。
■ 不動産業界が今、直面している“静かな危機”
不動産業界は一見すると「土地や建物があれば成り立つ安定業種」のように思われがちですが、地方においては以下のような構造的リスクを抱えています:
▾人口減少と空き家増加
とくに新潟県のような地方都市では、人口減少が年々進行しており、それに比例して空き家も増えています。
需要のある地域に物件が集中する一方で、それ以外のエリアでは「売れない・貸せない」物件が増え、取引件数そのものが減少傾向です。
▾ネットで完結する取引の増加
以前は「地元の不動産屋に足を運んで相談」が主流でしたが、今はポータルサイトやSNSを使って物件を探す時代。
情報提供の価値だけでは差別化が難しくなっており、「紹介手数料モデル」の限界が来ているといえます。
▾ホームセンターやハウスメーカーとの競合
リフォーム・建築・買取といった周辺事業に大手が進出し、地場の小規模業者は価格競争やスピード感で後れをとりやすい状況にあります。
■ この構造は、ほかの業種にも起こり得る
シルト企画のような「地域密着・仲介業モデル」は、不動産に限らず、今後同じリスクに直面する業種が増える可能性があります。
たとえば:
- 中古車販売やリース業
- 地元密着の建築設計事務所
- ブライダル仲介業
- 賃貸管理専門業(空室率上昇の影響を受けやすい)
これらはすべて、「モノを持たない仲介型ビジネス」であり、情報の非対称性が崩れた瞬間に“価格では勝てない”業態に陥るリスクがあります。
■ M&Aや第三者承継という“もうひとつの出口戦略”
こうした構造的課題がある中で、今後ますます重要になるのが「廃業ではなく、引き継ぎによるソフトランディング」という考え方です。
M&Aというと大企業の話と思われがちですが、実際には:
従業員10人未満の小規模企業
店舗1つの個人事業主
法人化していない地元ビジネス
といった事業者でも、後継者不在を解決する選択肢として活用されています。
たとえば同業他社が営業基盤を広げたい場合、地域の信用や顧客リストを「引き継ぐ」ことにメリットを感じ、買い手になるケースは多くあります。
■ 当協会のスタンス:事業の“終わり方”を一緒に考える
当協会では、新潟県内の中小企業・個人事業主を対象に、「どうやって終わるか」を一緒に考えるところから支援を始めています。
「売ると決めてはいないけど、今後が不安」
「後継者がいないけど、従業員やお客さんのために何かしたい」
「廃業してゼロにする前に、何か残せる方法を知りたい」
そんな方々の“最初の相談相手”でありたいと考えています。
■ 会社を“終わらせる”のではなく、“つなぐ”という発想を
事業に愛情があるからこそ、誰にでも譲れるわけではない。
それでも、「何もしないうちに終わってしまう」のは、もっとも悔いが残る選択肢かもしれません。
だからこそ、「まだ元気なうちに」「動けるうちに」行動することで、未来の選択肢は格段に広がります。
無料のご相談はLINEでも受付しております。