◆阿賀町の食肉加工メーカーが破産申請
2025年7月1日、阿賀町に本社を構えるアクアフーズ有限会社が新潟地裁に破産を申請しました。申請代理人は五十嵐広明弁護士(伊津・五十嵐法律事務所)で、負債総額は約1億1300万円と見込まれています。
同社は2001年設立の食品製造・販売業者で、主に業務用の食肉加工品を取り扱い、「手作り」「添加物を極力抑える」「小ロット対応」といった独自の付加価値を強みに営業していました。
◆大口取引先の減少と売上激減
数年前、大口顧客からの発注が大きく減少し、最盛期であった年商3億円規模から1億円を割り込む水準にまで落ち込みました。営業努力の結果、2024年12月期には売上が約1億5000万円にまで回復したものの、原価や固定費に対して十分な粗利を確保できず、最終的には資金繰りが限界に達し、破産に至りました。
◆なぜ“食肉加工”という業態が厳しいのか?(※以下は仮説を含みます)
コロナ禍以降、外食需要が急減したことにより、業務用食品市場全体が縮小。特に「業務用に特化したBtoBモデル」を取っていた企業は、その影響を強く受けたと考えられます。
また、食肉は原材料費の高騰が顕著であり、2021年以降、牛・豚・鶏のいずれの相場も右肩上がりが続きました(※農林水産省データより)。しかし、納品先が飲食業や施設などの場合、価格転嫁がしにくく、値上げ交渉が難航した可能性もあります。
さらに、同社のように「無添加・小ロット・手作り」という特徴を持つ製品は、人件費や設備コストも重くのしかかり、量産によるコスト圧縮が難しいビジネスモデルと言えます。小規模で高品質を追求する企業が、外的環境に左右されやすい構造を持っていたことも、今回の破たんの背景と推察されます。
◆EC・新規販路の開拓はなぜ成果に繋がらなかったのか?(※仮説)
売上回復の一因として、ネット販売など新規チャネルへの取り組みがあったとのことですが、これが十分な採算に結びつかなかったと報道されています。
仮説ですが、従来の取引先が業務用だった場合、ECチャネルは個人消費者を対象とするため、顧客層も商材設計も大きく異なります。たとえ同じ商品でも、ターゲットと販売方法を見直さなければ、ネット販路は“代替”にはなりにくかった可能性があります。
◆倒産を回避する余地はなかったのか?(※仮説)
このような業態の企業が厳しい環境を乗り切るには、以下のような戦略的打ち手もあったと考えられます:
- 価格改定の交渉力強化: 適正価格での販売体制を再構築し、利益確保を優先
- 業態転換: BtoC向けの冷凍食品やレトルト品など、在庫管理と収益性を両立する商品開発
- M&A・事業譲渡: 販路・人材・資本を持つ他企業との提携による生存戦略
- 地域連携: 地場のブランド力や補助金制度を活用し、持続可能な体制の構築
これらはすべて「今だから言える話」ではありますが、経営判断が遅れると選択肢が狭まり、「破産しか残らない」という状況になってしまいます。
◆倒産件数から見える“コロナ後倒産”の特徴
今回のアクアフーズのケースは、新潟県内で196件目となる「コロナ関連破たん」です。2020年~2021年にかけての直接的なコロナショックとは異なり、“後遺症型倒産”と呼ばれるタイプです。
このような倒産は、「支援金でしのいだが、回復に届かなかった」「一時的に売上は戻ったが、採算が合わなかった」など、タイムラグを経て表面化するのが特徴です。
今後、ゼロゼロ融資の返済が本格化するなかで、同様の事例が増えることも懸念されます。
◆M&Aや事業承継で“価値を残す”選択肢も
経営に行き詰まる前に、早い段階でM&Aや第三者承継の可能性を検討することが、倒産リスクを軽減するひとつの道です。
特にアクアフーズのように、「商品力」「独自技術」「地域の信頼」がある企業は、買手が見つかる可能性もあります。
当社では、そうした企業の“強み”を次世代へつなぐためのご相談を随時受け付けています。
無料のご相談はLINEでも受付しております。
参考資料
・にいがた経済しんぶん「アクアフーズ有限会社が破産申請」
https://www.niikei.jp/1668368/
・中小企業庁「中小企業白書2024年版」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/chusho.html
・農林水産省「食肉流通統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tikusan_ryutu/
・帝国データバンク「コロナ関連倒産動向」